「赤江、とっとと前に来て授業の続きをせんか!」

「……なぁ、一緒に行こうぜ。連帯責任だ」

教師に急かされ、立ち上がった優希は満面の笑みで見下ろしてくる。
私はそんな彼に負けない笑みを返す。

「ごめんね。僕、優希のように勉強ができないから授業を聞いているんだ。教えるなんてできないよ」

だから早く教壇に立って、先生の真似事でもして来いとの意味を込めて、手を振った。

「んのっ、裏切り者ー!」

「五月蝿い、いいから来い!」

肩を怒らせながら、教壇に向かって歩く彼の後ろ姿を見て思う。

優希はこんな人だったんだ、と。

皆に避けられる不良で赤髪だから、もっとこわいものだと思っていたが、玲の言っていた通り、本当は優しいのかもしれない。

教壇に立った赤江優希は、白板に書かれた題字を手のひらでたたいた。

「この中でこれが分かる奴いるか!」

んなむちゃくちゃな!?
と、教室にいる全員が多かれ少なかれ思ったことだろう。

「そんな授業の仕方があるか。分からんなら授業を聞いていなさい」

ぴしゃりと言い放つ教師に向かって、仁王立ちで言葉を返す。

「わかるっつってんだろ! ただ、忘れただけだ!」

むちゃくちゃな理屈を声高に述べる優希に、生徒は笑いをこらえることができなかった。