教師が入ってきて、授業が始まる。
変わらずつまらないものだったが、真面目にノートを取る。

全ては玲の為。

玲が後々見るものだと念頭において、教師の説明不足や理解の難しそうなところは、分かりやすいように書き足していく。

しかし、こうしている間も放課後のことが頭から離れない。

優希が言っていた呼び出しがかかった。
あわよくば、今まで玲をいじめてきた借りを返せるかも知れない。

誰だかしらないが、いい度胸だ。
覚悟していろ。

決意とともに手に力が入ったようで、シャーペンの芯が折れた。
ノックして芯を出し、再びノートに滑らせる。

差出人の名前がない、いかにも怪しい呼び出しなんて、行く必要ないのに。

ぽきっ、と芯の先が飛んでいった。
ノックして続きを書いていく。

玲は律儀だ。
それが彼のいいところなのだが、少々素直すぎるきらいがある。
この性格を利用する奴らが許せないなぁ。

バキッ、とシャーペンが手元で真っ二つに折れた。

「さっきから何やっとるんだ達富!」

中年の教師に名指しされ、対人用の顔を瞬時に作る。

「シャープペンが壊れただけです。なにもやっていません」

二つになったシャーペンをひらひらと掲げて見せる。
教師はそれで納得したのか、白板のほうを向いて授業を再開した。

「普通、あんな壊れ方するかよ、バカ力」

隣から呟きが聞こえて、新しく持ったシャーペンの芯が飛んだ。

「達富いいかげんにしろ、それと赤江!」

「俺っ!?」

「前に出てきてこれを説明しろ」

「何で俺が! こいつじゃねーのかよ!」

びしっと私を指差して訴える優希。

「達富は真面目に聞いていただろう。話しかけたということは、授業の内容が分かっているということだろう」

「………うそだろ」

言い逃れのできない優希は眉尻を下げて情けない顔をした。