何事もなく昼食を終え、教室に戻る道すがら。
談笑しながら前を歩く沙貴と弘海についていく。

彼らは何をそう話すことがあるのか、一向に止む気配がない。
だからといって、私と優希の間に会話があるわけでもなく、周りの声を聞き流しながら歩くのだ。

教室に入り、席についても、前の沙貴とその隣の弘海の話は終わらない。
隣の優希は寝る姿勢に入る。

……次の授業の準備でもしておこう。

机の中に手を入れると、覚えのない紙に触れた。
それを出してみると、白無地の封筒で、表にはかわいい字で『達富玲様』とある。
裏返してみても、差出人の名前はない。

中身を取り出し、二つ折りされた紙を開くと、封筒と同じ字が並んでいた。

『今日の放課後、ひとりで体育館裏倉庫に来い』

普通の便箋の真ん中にこれ一行。

結局、差出人の名前はどこにもない。

便箋を折り目に合わせてたたみ、封筒に戻し鞄に入れる。
それを見計らったかのように5限目始業のチャイムが鳴った。