「食堂行くぞ、腹減った」

この空気を壊したのは、半ば存在を忘れかけていた優希。
すでに屋上の扉に手を掛け、この場を去ろうそしていた。

「僕たちを置いて行く気ですか」

私は優希の元に駆け寄る。

「うるせぇ。だからちゃんと声かけたじゃねぇか」

ありがたく思えと言わんばかりの態度をとる彼の脛を蹴る。
そこを抱えて蹲る優希を鼻で笑って、沙貴と弘海に行きますよと声をかけた。
すると、ぽかんとしていたふたりは目を覚まし、小走りでやってきた。

「驚いた。まさか、玲君が赤江君を蹴るなんて」

沙貴のつぶやきに、弘海も同じくというように頷く。
どうやら、いくら腹が立つことがあっても蹴らないのが『玲』らしい。

いや、解っていたよ。
玲がこのような事しないってことくらいは。
つい身体が動いてしまった、反省。

優希の言った通り、私と玲は、私が思っている以上に似ていないようだ。