近くに散らばっている斎賀沙貴の私物を持ち、教室の外へ出ると、壁に背を預け立っている赤江優希を見つけた。

「終わったのか?」

彼はそう言いながら、弾みをつけて壁から肩を離す。
その片手には、私が半ば無理矢理押し付けた教科書などがある。

「ああ。ついでにこれも持って下さい」

私は手にある斎賀沙貴の私物を赤江優希に差し出す。
彼は嫌な顔をしながらもしぶしぶ受け取ってくれた。

手が空いたところで、もう一度しっかり腕の中の彼を抱え直し、もと来た道を引き返す。

「玲、どこ行く気だ!」

後ろの方で立ち止まったままの赤江優希が問うてきた。

「教室です」

「はぁ? 授業どうするんだよ」

「行きません。こんなことがあったのに、受ける気にはなりません」

ただ、と腕の中でじっとしている彼を見下ろす。

「斎賀沙貴、君が望むなら授業を受けに行きます。いかがしますか?」

彼の答えは早かった。

「玲君が思うようにして。あと、僕のことは沙貴って呼んでほしいな」

「わかった。沙貴、教室で一緒にサボりますか?」

「はい!」

沙貴は破顔一笑した。
赤江優希は額に三本指を当てて、深い息を吐く。

「だったら、いい場所がある。そこ行かねーか?」

彼の提案に、私と沙貴は同時に首を傾けた。