身内の玲が現在進行形でいじめにあっているからか、他人事には思えない。
音で判断して、いじめが行われているであろう教室の扉の前に立つ。

「お前、もしかして助ける気かよ!」

「目の前でいじめが行われているのを、見てみぬふりはできん。案ずるな、私は強いから」

そう言って私は赤江優希に手に持っているもの全てを預け、横開きの戸を開け放つ。

「誰だ!」

「風紀か!?」

大きな音のせいで気付かれ、中に居る人全ての視線が集まる。

「ご期待に沿えず申し訳ないけど。ただの通りすがりの一般生徒ですよ」

中に居たのは三人。
押し倒されている人の顔は見えないが、押し倒している方二人の顔は見えた。
いかにもチンピラって顔をしている。

彼らは私の顔を認めると、こわばっていた顔が一気に安堵の色に変わる。

「なんだ、こいつか」

「残念だったな。助けに来たのがこんな奴で」

「いやーっ!」

再びいじめを始めるチンピラ二人。
こちらのことは眼中にないってか。

被害者は小さい体で必死に抵抗しているようだが、効果はない。
一方的な弱いものいじめであることはわかりきっていた。

「その手を離してください」

「うっせぇ、裏口入学のくせに生意気いってんじゃねえよ」

「もしかして玲くんも仲間に入れてほしいんでちゅかー?」

ギャハハと汚い笑いを撒き散らすチンピラ共。
どこの世界もチンピラは変わらないなと、口元が笑みをつくる。

いじめられている人の抵抗が止んだ。
力尽きたか、諦めたのか。