他の授業でも、わざと難しい問題を玲に当てる教師はいた。
もちろん私は、その都度文句のつけられない解答を披露し、返り討ちにしてやったのだが、クラスメートに受け入れられることはなかった。

勉強ができると友達ができるという話を聞いたことがあるが、真っ赤な嘘だ。

玲のためを思うなら、友人を作ったほうがいいだろう。
しかし、私にとっては変に質問攻めされてぼろを出す心配がない分、助かっているのも事実。

「玲、次移動」

机に伏せていた体を揺さぶられ、目を覚ます。

授業始まってまず、玲に専用の問題が出される。
それを私が瞬時に解いてしまうために教師にいないもの扱いされ、残りの時間は何をしても怒られることはない。
だから授業時間50分、ずっと寝ていた。
これなら寝溜めしておく必要はなかったかな。

教室には私と赤江優希以外にはおらず、他は既に移動してしまったことが伺える。

私はよいしょと立ち上がり、筆箱と教科書を抱える。

「行くぞ」

「何でお前はそう、偉そうなんだ」

先を歩く私に追いつき、隣を歩く赤江優希。

次の授業が行われる教室は、こことは離れたところ、別棟の方にあるらしく、他は余裕をもって移動したとのこと。
今から出ても十分間に合うと彼は言う。