瞬間、理解した。

生徒も一緒になって玲を苛めているのだと。
問題を解けず、あわあわしている玲を見て楽しんでいたのだ。

ふつふつと沸き立つ怒りを発散する術は今はなく、温和しく席を立つ。

白板に向かうまでに出される足をさりげなく躱し、担任からペンをひったくる。
その際、悦に入ったその整った顔を睨むことを忘れない。

生憎、今の私に玲のふりをすることは出来そうになかった。
頭に血が上っていたから仕方ないと、玲は許してくれるだろうか。

今一度、白板に書かれている問題に目を通し、右側に答えを書いていく。

某有名大学を飛び級かつ主席で卒業した身。
これくらいの問題であればあくびをしながらでも出来る。

文句のつけどころがないような答え方をし、担任に向き直る。

「いかがでしょうか」

彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、正解とだけ応えた。

これ以上ここに留まる必要もなく、ペンを教卓に置き、席に戻る。
唖然とする者の他、性懲りもなく通り道に脚を出してくる奴がいたが、私は何もないように通り過ぎた。

「流石だな」

周りには聞こえないように、赤江優希が話しかけてきた。
私は腕と脚を組んで、当然だと態度で示す。

今度こそ授業開始の鐘が鳴り、担任は白板に書かれた長い問題と解答を消していく。
そして新しく書いたのは、高校で学習する問題。

まさか、先ほどの問題は、玲を笑いものにするだけののために書いたのか。

私は強くこぶしを握ることで怒りを抑えた。