そうこうしている間に、担任教師瓜原剛は話を終え、白板に数字や記号を並べていく。

数学の問題か。

いつの間にかHRは終わり、授業に入っていたようだ。
担任の話は聞いてなかったが、別に構わないだろう。

白板の左半分を使ってひとつの問題が書かれたところで、鐘が鳴った。

「今のはHR終了のチャイムだが、次は俺の授業だ。このまま授業に入る」

途端にざわめきだす教室。
皆一様に鞄や机からノートと教科書を取り出す。

私も机から筆記用具、教科書、ノートを取り出し、机の上に置いたままだった鞄を机の横にかける。
隣を盗み見ると、赤江優希も起きて、教科書などを出していた。

不良な見た目に反して真面目なことに驚かされる。
……差別ではないよ。

「まずは、授業開始のチャイムが鳴るまでに、この問題を解いてもらおうか」

白板を親指でくいと指した担任。

その問題は、高校では到底習わないもので、流石は私立の学校と人事のように思う。

くすくす笑いをする生徒、ニヤニヤしている担任。
何かを企んでいるような嫌な空気が教室中に漂う。
その正体がわかったのは、担任の一言だ。

「達富、前に出て解いてみろ」