赤江優希がどかりと椅子に座り、組んだ腕の隙間から隣の席を座す。
そこが玲の席ということか。

窓側の一番後ろ、覚えやすいな。

教室にはほとんどの生徒が集まっており、私が席に着くところを不躾に見てくる。
非常に居心地が悪い。

前の席に座る癖っ毛の生徒もこちらを気にしているようで、あからさまでないにしろ横目で見てくる。
いちいち気にするのも面倒なので、気づかないふりをしておく。

鞄の中のものを机の中に入れているところで鐘が鳴り、前の扉から誰かが入ってきた。

年齢は20代前半てところか。
短く明るい髪に切れ長な茶色の瞳。
細身の黒いスーツを着こなし、第三ボタンまで開けられた赤いシャツからは光を反射する装飾品がのぞいている。
大量のプリントや生徒名簿を持っているからこそ教師だと判ったが、それがなければホストにしか見えない。

彼が教室に現れた瞬間から、少し低い黄色い声をあげる小柄な生徒。

食堂の再来か。

ホストな教師は、手に持っているものを教卓に置き、その上に手をつく。

「静かに」

「…………」

まさに、鶴の一声。
先ほどまでの喧騒が嘘のように静かになる。