オムライスを全て赤江優希に押し付け、食べ終わったと同時に席を立つ。
鞄を持ち、彼の案内で教室へ向かった。
歩く先々で周りからのヒソヒソ声が絶えないことに気分が悪くなる。

「やな感じ」

ぼそりと呟くと、隣で恐い顔をした赤江優希が同意した。

「玲はこれに耐えきれなくなったんだ……」

納得。
玲らもともと控えめな性格だ。
だから、こんな敵意剥き出しの視線にさらされて平気でいられる訳がない。

「あいつ、こうなったのは全部、自分に非があると思っていやがった」

「素直ないい子だから」

「だから危ういんだ。普通、殴られると判っている呼び出しに行くか? 喧嘩する力も、それを回避する能力もないくせに」

彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、私に訴えてきた。

「それを、いつも助けてくれたんだな」

ちょうど玲と赤江優希の所属するクラスに着いたようで、開け放たれていた扉をくぐる。
後を追う私は、少し離れた背に向けてつぶやいた。

「有り難う」

玲を護ってくれて。

彼はなんの反応も示さなかったが、聞こえていなくても構わない。