「朔弥」

低く、それでいてよく通る声に、橙色の男が振り向く。

「なーに、威士」

「先行くぞ」

威士(たけし)と呼ばれた薄い金髪の男の後ろに、プラチナブロンドの長髪を右肩のあたりでゆるく結んだ細身な眼鏡の男と、癖のない切り揃えられた艶やかな黒髪を持つ長身な男が立っている。
遠くて顔は見えないが、いづれも、タイプは違えど綺麗な顔立ちをしていることは知っている。

「じゃーまたね」

朔弥(さくや)と呼ばれた橙色の彼は私たちに軽く手を振ってから、三人組の方に歩いていく。
合流してから四人は何か話しながら歩き、奥の方にある階段をあがる。

彼らの姿が見えなくなると、食堂内の歓声は個々の話し声に変わった。
それも、先ほどまでよりは幾分か弾んで聞こえる。

「あいつら、生徒会」

周りをうかがっていた私に、赤江優希は鮭の身を剥きながら言葉を発する。

「生徒会と、風紀委員会の長と副は学校でも上位の美形で、でっかいファンクラブ、親衛隊ってのがついてんの。キャーキャーうるさいのはそいつら」

「それはそれは大仰なこと」

「バカにしてんなよ。あいつらの肩を持つ気はねーけど、実際そうなんだって」

「で、その生徒会とやらは不良チームを作っているのではないか?」

唐突な質問に、彼は箸でつかんだばかりの鮭の身を落とした。
落ちた先は皿の上。