云えないコトノハ

近いところで聞こえた声の方向に顔を向けると、無造作に跳ねた橙色の髪が似合う、へらりとした男の顔があった。

赤江優希は目に見えて嫌そうな顔をする。
周囲が黄色い声で騒ぐ。

「これのどこが、おあついなんだ」

赤江優希が橙色の髪の人を睨んで問うと、橙色の彼はきょとんとした。

「あれー? いつもは真っ赤になって照れちゃう優希ちゃんなのに、なんで今日に限って嫌そうなの? 喧嘩でもした?」

最後の方は私に問いかけてきたので、苦笑いを返す。

「優希は僕の食べさせてあげるオムライスが嫌いみたいなんだ」

「あれー、玲ちゃん緊張してるの? 声が固いよ」

「そうかもしれません」

私は愛想笑いをする。
不審に思われていないか、内心ひやひやした。
まさか、優希の他に玲を知る者がいたなんて。

そんな私に、彼は人好きのする笑みを浮かべてささやいた。

「いつでも相談してね。俺と玲ちゃんの仲でしょ」

どんな仲だ。

心の中で呟いた時、場内がいっそう騒がしくなった。