云えないコトノハ

その一連の動作に感動を覚えていると、向かいに座る彼が箸を取る。

「当たり前。ここはシェフもウエイターも清掃員も一流ばかり揃ってる」

「さすが、金持ち学園」

「怖気づいたのか?」

「まさか」

私はメロンソーダをひとくち含み、赤江優希は納豆を無心に混ぜ始めた。
彼の朝食は見たところ、焼鮭定食といったところか。

つられるように私もオムライスの端を少しスプーンに乗せ、口に入れる。
瞬間、眉間にしわが寄ったのを目ざとく指摘してきた。

「注文間違えたのかよ、だっせー」

「違う」

「どこが違うってんだよ、そんな顔して?」

どんな顔かは知らないが、けらけら笑われれば誰しも怒ることだろう。
公衆の場で怒りに任せて暴れるわけにはいかないので、そこにはあえて触れない。

「私の好みではなかっただけだ」

私はスプーンを意味もなく動かす。

「はぁ? あんなに種類あったのにか」

「普通、オムライスといえばひとつだろう」

「普通にいろんな種類あるから」

赤江優希はこう言うが、上にカツやらハンバーグやらの乗ったものはオムライスの名を騙るまがい物だ。
断じてオムライスなどではない。
ここは譲れないよ。