云えないコトノハ

「だったら、入れ替わりなんてやめちまえ!」

お前が来なければ玲はここにいたと言外に告げられているようだ。
いや、実際そうなのだろう。

攻められて良心が痛むのか、わけもわからず胸がきゅーっと苦しくなった。
それを見て見ぬふりをする。

「三日前にも言った、玲の頼みだからと」

赤江優希は声を立てて息を吐いた。

「本性見られても知らねーぞ」

「私はそんなへましない」

彼に心配されていると思うだけで嬉しくなる。
胸の痛みも感じない。
声も無意識に弾んだ。

軽い音とともに目の前の扉が開いたと同時に、私は玲の仮面をかぶる。
エレベーターから降りれば、そこにいる全員の注目を浴びることとなった。

なぜ。

「さっきも言ったが、玲は外出しなかったんだよ。だから珍しいんだろ」

隣を歩く赤江優希が教えてくれた。
まるで珍獣あつかいだ。

「それだけでこんなにも視線を浴びるものなのか。ここの学生の記憶力はすごいんだな」

「なんでそう思ったんだ?」

さすが進学校と感心していると、疑問が投げられた。
そんなことに理由が必要かと思いながらも答える。