「正直に言うぞ、俺はお前じゃなく玲にいてほしいんだ!」

びしりと私を指差してなおも言い募る。

「だが、この学校のレベルは玲にとって高すぎるのも、だから生活しづらいことも十分わかっているつもりだ」

私は組んだ脚の上に頬杖をついて、彼の言葉の続きを待った。

「玲のためを思うならこうしたほうがいいと頭ではわかっているが、それでも俺はっ……!」

「ふーん。つまりお前は玲が好きなわけか」

赤江優希の言葉を遮り、からかい半分で口を挟んだところ、彼の顔はその髪に負けないくらい赤く染まる。

「もしかして図星?」

口端を上げてみせると、彼はさらに顔を赤くし、殴りかかってくる。
その拳を手のひらで受け流し、もう片方の手で赤江優希の腕をつかみ、上体を半回転させ投げ飛ばした。

「いくら本当のことを言われたからといって手を挙げるのはよくないよ」

「……お前、何者だ」

驚いた顔をしたのは一瞬。
不恰好に仰向けになった状態から、顔だけを私に向けて睨みつける。

「私は天花寺麗という」

「名前じゃなくて、なんでこんなことできるんだよ!」

「ふむ、おそらく護身術のようなものができるからかな?」

「俺にきくな!」

彼は腰をさすりながら起き上がり、もといた位置に座りなおす。
大きく息をつく彼の、顔の赤みは引いていた。