共同スペースの大きなソファーに座り、悠々とテレビを見ていた私は、後ろで扉の閉まる音を聞いた。
面白くもないテレビに視線を向けたまま、近づく気配に声を声をかける。

「玲と話はできた?」

「ああ」

返ってきた声は先ほどより幾分穏やかなものになっていた。

よかった、これからしばらく一緒に生活しなければならないのに、ぎすぎすした関係にはなりたくない。

無言で出された画面の暗くなったケータイを受け取り、自分の服のポケットに無造作に突っ込む。
赤江優希はそのまま向かいのソファーに腰をおろした。
何か重要な話をする雰囲気を漂わせていたので、テレビの電源をおとし、彼に向き直る。

「……玲に、お前はいとこだと聞いた」

確認するだけの問いかけに返答は求められていない。

「アメリカの超一流大学を飛び級、主席で卒業。その後、両親はアメリカで仕事を続け、お前は日本で一人暮らしをしている。学校には帰国後一切行っていない」

彼は私から目をそらさず、眼光を鋭くした。

「ここに来たのは、勉強ができない玲に代わって卒業する為か?」