この目付きのどこが優しい人なのかな、玲、嘘言ったのなら怒るよ。

やがて手を伸ばせば届く位置にくると、いきなり彼の手が私の首に伸びる。
私はその手首をつかんで止め、彼に微笑む。

「優希、どうかした?」

「誰だ」

高圧的に誰だって訊かれても困る。
どういう答えを望んでいるのだろうか。

そんな私の困惑を知ってか、彼は続ける。

「お前、玲じゃないだろ。何の目的があってここにいる」

「………」

とっさのことに何も言い返せなかった。
初めて会ってそれを見抜けた人など、いくら記憶を掘り下げても出てこない。

「答えろ!」

しびれを切らせた彼は、空いている方の手で私の胸ぐらをつかみあげる。

「ぐっ……」

体が強く引っ張られた反動で、座っていた椅子が音をたてて倒れた。