奥行きがあり、ここに来るまでの扉と扉の感覚から、部屋はかなり広いことが窺える。

隣の下足箱には、玲のものと思しき靴と、同室者のそれがいくつか入っていたが、大きさが明らかに違うため、間違えてはいてしまうことはないだろう。
小さいほうのローファーを試しに履いてみると、ぴったりだった。
愛用のスニーカーを下足箱の空いたところに入れ、ローファーは出したままにしておく。

中に入ってすぐ目に付くのは、中央にソファーとテーブルの置かれた共同スペース。
玄関を見たときから感じていたことだが、物が少ない。

あらかじめ教えられていた玲個人の部屋を覗くと、物が結構あった。
といっても、床に散らばっているが故の錯覚だったようで、教科書、ノートは棚に。
服はクローゼットに片付ければ、うってかわって閑散としたものになる。

全貌を現したベッドは、造りも大きさも一般的な一人用で逆に安心した。
そこに寝転び、ぼんやりと天井を眺める。

……暇だ。

勢いをつけて起き上がり、机に向かう。
暇つぶしにと、片付けたばかりの教科書と、それに対応するノートを開く。
教科書には、蛍光ペンの線が所狭しと引かれており、目が痛い。
ノートは文字が乱雑に書かれているので、どれだけ頑張っても読めない字があった。

玲は要領が悪く、字も汚いようだ。
なんとなくだが、彼のテストの点が悪い理由が解った気がした。