車で走ること数分。
私が降ろされた場所は玲いわく寮らしい。

超高層マンションに見えるそれに、高等部の全生徒が暮らしているという。
車内で話を聞いた限りでは冗談だと思っていたが、これを見ればうなづける。
なんとかは高いところが好きってか。

「じゃあね、麗。あとよろしく」

「大船に乗ったようなつもりでいて。また会える日を楽しみにしてる」

「うん」

私たちは別れのあいさつを交し合い、玲が手を振るのを合図に、彼を乗せた車は走り出した。
それが見えなくなるまで小さく手を振って見送り、林が車の姿を隠したところで手を下ろす。
いつまでもこんなところに居るわけにも行かない。

一度空を見上げ、伸びをしてから寮に足を踏み入れた。
ガラスの自動ドアを越えると、内装がよくわかった。
中は温かみのある色で統一され、広くゆったりとした造りになっている。

エレベーターを見つけるのは簡単で、それに乗り込み玲に教えられた階のボタンを押す。
扉が閉まってから開くまでがすぐなのは予想済み。
改めて驚くことはない。

聞いていた通りの道を進むと、ほどなくして玲の部屋は見つかる。
今の時間は授業中のため、人と会うことなくたどり着けた。
扉の横に取り付けられた機械に玲から預かったカードを通せば、開錠のランプが点く。
私は迷うことなく扉を開き、中に入った。