部屋から少し離れたところで玲が口を開く。

「お父さんがいちいちうるさくてごめんね」

「もう慣れた」

ため息とともに吐き出された私の言葉に玲はうなだれる。
過保護な父親に困っていながら反抗する勇気を持てないと、かつて玲に相談されたことがあったのを思い出す。
結局、解決策を見出すことはできず、未だ保留となっているのだが。

既に待っていたエレベーターに乗り込み、一階正面玄関前に着くと、私をここまで送ってきた車と運転手が待機していた。

もしかすると、私をあの部屋に送り届けてからずっとそこで待っていたのだろうか。
だとしたら、いくら仕事とはいえど申し訳ない。
運転手によって開けられた後部座席の扉をくぐり、玲と私は車に乗り込んだ。