「この学校に、未練でもある?」

思いつくままに問えば、無言でうなづかれる。

「聴いてもいい?」

「………麗はここが全寮制だって知ってる?」

「うん」

私は玲の話に耳を傾けた。

「二人一部屋なんだけど、僕の同室者、すごく僕によくしてくれたから……最後に顔、見たかったなと思って………」

同室者のことを話す玲の顔は、寂しさと苦しさが混ざり合ったようなものだった。

「会って行かないの?」

彼はゆっくりと首を横に振る。

「会わない。でないと、ここから離れられなくなる」

体の横で強く拳を作りながら紡ぐ言葉に、会わないのは玲なりのけじめであり、覚悟なんだと思い知らされた。
玲は自分のポケットから一枚のカードを取り出し、私の手に握らせる。

「これ、僕の部屋のカードキー。学園内限定のクレジットカードでもあるから、使い方は……周りを見ればわかると思う」

「了解」