無意識に小さな舌打ちが漏れる。

『舌打ちなんて駄目じゃないか、女の子だろう』

聞こえていたか……。

だが、それは男女差別だ。
男だからといって舌打ちしていい理由はない。
思っても言えなかった。

私はこの人が嫌いだ、彼も私を嫌っているはず。
だから今まで電話することもなかったのに。

ケータイ画面に表示されている名前は、達富信司(たつとみしんじ)といって、私の叔父にあたる人物だ。
ずっと無言でいると、向こうが先に口を開いた。

『まったく、愛想の悪いこだな、麗(うらら)ちゃんは。それに比べて、うちの玲(れい)はとても可愛いよ』

彼に麗ちゃんと呼ばれた瞬間、悪寒がはしった。
全身で拒否している証拠だ。