云えないコトノハ

最終的には、有無を言わせず迫る彼に反抗するのが面倒になり、妥協するしかない。

「書けばいいんだろ!」

投げやりに発した声は荒っぽいものの、叔父は満足そうに誓約書を押し付けてくる。
ひったくるようにそれを奪い、文章を読む。

内容は、玲がいいというまで玲の身代わりになることを承諾させるものだ。

特に怪しい文はなかったので卓に置き、自分の名前を書いた。
その隣に拇印を押せば、先ほどの仕返しとでもいうのか、誓約書をひったくられた。

当然、あまり気分のいいものではないな。
強く握ったままでいて、破らせてやればよかったかと思考の端で思う。

叔父は今し方ひったくったものの確認をしてから、大事そうにそれを鍵つきの棚に収めた。
内心で親バカめと悪態をつく。

「ごめんね、こんなことさせちゃって……」

隣で玲が申し訳なさそうに目を伏せる。

「かまわないよ。私は、玲の役に立てて嬉しいから」

微笑みかけながら本心を告げても、玲はいまだ晴れない顔をしている。
何が彼にそんな顔をさせているのか、想像つかなかった。