云えないコトノハ

「お願いします! やっぱり、高校卒業までとは言わないから、せめて僕が勉強して、頭よくなって、この学校に帰ってくるまでの間。僕の代わりに学校に通ってください。大学を卒業した麗ならできるはずだから!」

そう言った彼に、私は迷うことなく手を差し出す。
答えは初めから決まっている。

玲は私を見上げてきて、その漆黒の瞳を不安そうに揺らしていた。

「どこまで玲の期待にそえるかわからないけれど、私にできることならやらせてもらうよ」

「……ありがとう」

差し出されている私の手を、玲は両手でとても大切なものを受け取るようにしてとった。
叔父ほどではないが、私も大概、玲に甘い。

「そうと決まれば誓約書を書いてもらおうか」

待ってましたとばかりに、叔父は目の前の卓に誓約書とボールペン、朱肉を叩きつける。

「そんなことをいちいちしなくとも、玲との約束は守る」

半目で叔父を睨みつければ睨み返された。