云えないコトノハ

「……僕、頭悪いから」

ぽつり、玲が静かに話し出す。
彼は、何かをこらえるような表情を下を向くことで隠した。

「ほら、ここって進学校でしょ、授業についていけないんだ」

彼の声には諦観が混じっていた。

「この間のテスト、最下位だった。学校始まって以来、見たことのない点なんだって」

何点だったのか気になったが、訊けるわけもなく。

「当然だよね、お父さんのコネで入ったんだもん」

裏口入学か。
なんとなく真相が掴めてきた。
ひとり息子がかわいいのはわかるが、その子のためを思うならやっていいことと、悪いことがある。

私は叔父を睨みつけた。
文句を言ってやりたかったが、玲の手前そんなことはできない。
私と叔父の間には、玲の前ではいがみ合わないという暗黙の了解がある。
互いに、玲に嫌われることはしたくないからな。

「お父さんの立場もあるから、僕はここを辞めるわけにはいかない。だから」

玲は勢いよく立ち上がり、私に深々と頭を下げた。