云えないコトノハ

単純な玲は恐怖心が霧散したようで、私にまわった腕をゆっくり外していった。
それを変わらぬ笑顔で見届けた叔父はソファーを指して、そこにかけなさいと言う。
断る理由もなく、玲に手を引かれて隣に座る。

卓をはさんだ向かいに叔父が腰かけた。
彼の眉間に若干の皺がよるのを見てとれたが、いつものこと。
あえて今更言うことはしない。

「お父さん……」

玲の一言で、表現そのままに叔父は頷く。

「麗、僕たち、誕生日は同じだし、顔も声も体格もそっくりだよね!」

振り返り様、玲に真剣な目を向けられ、勢いに圧された私はそうだねとだけ返す。
事実そうだから否定することもない。

「そんな麗にだから頼める事なんだ!」

このくだりで、玲の言いたいことがわかった気がした。
これは予感ではない、確信だ。