云えないコトノハ

咳払いが聞こえて私と玲が目を向けると、重厚な机に肘をついて射殺さんばかりの眼光を向けてくる叔父があった。
このような目付きを前にして、玲は震え、私を抱く腕に力を込める。
そのせいで叔父の眼光はますます鋭くなり、比例して玲の力も強くなるものだから、見兼ねて一言、言わせてもらう。

「叔父さん、顔怖い」

はっとしたように、彼の鬼の形相は一瞬にして鳴りを潜め、怖いくらいに満面の笑みを見せる。
やっと己の顔に愛息子が怯えていると気づいたらしい。

「ごめんねー玲。怖かったかい? 麗が玲に引っ付くのが悪いんだよ」

前半は玲に、後半は私に向けて言う。