云えないコトノハ

広い部屋をぐるりと見回すと、こちらを見ていた自分と瓜二つの容姿を持つ人が飛びかかって来るのが見えた。

「うーららっ」

私は体勢を崩すことなくその抱擁を受け止める。

「久しぶりだね、元気にしてた?」

人懐っこい子犬を連想させる彼の頭を数度撫でる。
身長も私とあまり変わらないことが判る。

「元気だよ。玲こそどうだった? 達富学園に通っているなんてさっき初めてきいた」

「ぅ、ん。……まあね」

玲は歯切れ悪く返事した。
無理に笑おうとするので何かあるのだと感じたが、追及するのはやめる。