テーブルに広げた機材を片付けたところで、風紀委員室の扉が開き、見回りを終えた委員が戻ってきた。

「A区画、異常なしです」

「D区画も異常なしっす」

やがて全員が帰ってきて、どこも異常なしと報告された。
報告が終われば順次解散で、最後に報告に来た人が、未だお休み中の青木を引きずり風紀委員室を出た。
残るは私と光紀、李白、松本だ。
少しして、松本はノートパソコンを閉じ、眼鏡を外した。

「本日の業務は終了しました」

「じゃあ帰るか」

「委員長たちはお先にどうぞ。僕は天花寺様に少々用事がありますので」

彼は光紀と李白に目配せする。
要約すると、今から内々の話があるから、席を外してくれないか、だろう。

「それは、会社関係の話か?」

「いえ、あなた様についてのお話です」

「なら、二人がいても構わない」

「ですが………」

なおも言い募ろうとする松本を視線で制する。

「……おおせのままに」

私の正面に座っていた光紀が横にずれ、空いた所に松本がつく。
先ほどはいきなり命令して申し訳ありませんでした。
他言しないので本当のことを教えてほしいと前置きして。

「あなた、天花寺麗様ですよね」

核心をつく言葉を放った。

「……なぜ、そう思った」

やはり、このことか。
予想はしていた。
努めて冷静に、彼を正面から見据える。

「昨日、風紀委員室にあなたと委員長だけ残った際、薄々と……。今日、委員長と副委員長がかばったのを見て、確信に至りました。決定打はハッキング技術ですね」

「ちょっと待て、何で俺たちがかばっただけでそうなるんだ」

「かばったからですよ。他の人にはあそこまでしないでしょう。『familiar』は仲間意識がとても強いチームと聞いていますから、何もしないはずがない」

光紀の問いかけに、詰まることなく答えた。

「私と『familiar』に関係があると?」

「天花寺様は『familiar』の総長様ですよね。一時期は達富玲のおかげで生徒会が騒ぎましたから、総長様の顔は大方予想がつきます」