風紀委員室の扉を開けると、制服を着た屈強な男達が背を向けて整列していた。
申し送りは既に始まっていたらしい。
終わるまで後ろでおとなしく聞いていようと控えていると、光紀とばっちり目が合った。

まずいな………。

私が顔を逸らす前に、いい笑顔になった光紀に手招きされる。

……呼ばれているのは私か。

委員長が話を中断して起こした行動にざわつく委員たちの間を抜け、光紀と李白の間に立つ。
こうしてみると、さすが風紀。
役職と体格にあった顔の者が多いように思う。

「この人がさっき話した、新入風紀委員だ。皆よろしく頼む」

光紀の紹介に、私は黙して頭を下げた。

「こんなもやしみたいな奴に風紀委員が務まるのかよ」

「そうっスよ委員長。それに、こんな派手なの校内で見たことないっス」

次々とあがる批判的な声。
私は、まあ仕方ないことだろうなと甘んじて受け入れていたが、光紀と李白はそうでもなかったらしい。

「うるせぇ、文句あんならかかってこい! 俺が相手してやる」

「………ん」

不良らしさを惜しみなく発揮する光紀と、無言で指を鳴らす李白。
ふたりの放つ殺気に、がたいのいい風紀委員の面々でさえ顔面蒼白になっていた。
ごく普通のことを言って、こんな目にあう彼らを不憫に思う。

「……まあ、委員長も副委員長も落ち着きなさい。彼らは当然の疑問を口にしただけだ」

こんなぽっと出の、どこの馬の骨とも分からない奴。
それも『もやし』に異論が生まれないなんて、まずありえないだろう。

私が静止をかけると、しぶしぶではあるものの、殺気を抑えてくれた。

「……文句があるのは私にだろう。ならば、手合わせ願おうか」

「レッ…!」

夜での名前を呼びかけた光紀の唇を人差し指で押さえる。

「これが一番手っ取り早い」