周りを山に囲まれていて、その山を含めた内側全てが学園の所有地となっている。
だからといって孤立しているわけでない。
1時間かかるが、山さえ越えれば都会の景色が広がっているからだ。

まあ、私がいたところのような住宅街に抜ける道もあるらしいが、必要のない知識だろう。

記憶を掘り起こすのをやめて目を開けると、未だ木ばかりの代わり映えしない景色が続く。
ずっと見ていると、同じところをぐるぐる回っているような錯覚に陥りそうになる。
もしかしたら、この道に終わりはないのかもしれない。
柄にもなくそんなことを考え始めた頃、前方に大豪邸を彷彿とさせる横長の建物が現れた。

「あれが、私立達富学園高等部です」

運転手が言う。
学校というには似つかわしくないそれに、あっけにとられている間にもぐんぐん近付き、正面入り口前で停車した。