枕元に置いてあるケータイが鳴り出し、意識が現実に引き戻された。
目を開けるのも億劫で、音と記憶を頼りに手探りで目的のものを探す。
充電器に差したままだったそれは容易に見つかり、通話ボタンを押して耳元にあてがう。

「……はい」

寝起きのせいで出にくい声を無理に出したせいでかすれた音になったが、相手には伝わったらしい。

『私だよ』

返ってきた男性の声に驚き、片目だけ開いて画面にうつる文字を確認しようとした。
暗い部屋での人工的な光は、暗闇に慣れた目にとって強すぎる刺激となって襲いかかる。
それをなんとか目をつぶることでやり過ごす。
画面に表示されている相手の名前を見て、受話器を取ったことを後悔した。
声で大体の予想はついていたが、違うと思いたかった。