7月になった。
「…っ」
移動教室のとき、苦しくなってきた。
からだの中で何かがぐるぐるしてる感じ。
力が抜けてくる。
ODは暑さに弱い。
一年で一番夏に体調が悪くなる。
「ごめん、茉莉。先いってて」
「?うん、わかった」
茉莉は深く詮索しない。
だから一緒にいやすい。
トイレに駆け込み、しゃがんで呼吸を整える。
…少し、収まってきた。
ここから教室は近い。
慌てて、でも走らずに向かう。
茉莉が教室の前で待っててくれた。
「茉莉!?待っててくれたの?」
「ひかり、大丈夫?」
「え…?」
「具合悪いなら言いなさいよ」
「!」
どうしてわかったんだろう。
隠してたのに。
「さ、早く入ろ」
「なんで、わかったの?」
「え?」
茉莉が怪訝な顔をしてこっちを見る。
「見てたらわかるでしょ、普通」
「っ!」
普通じゃないよ。
私が本気で演技したら親でさえ具合悪いことに気付かない。
『しんどくなんかない』って周り騙して今までやってきたのに。
そうして自分守ってきたのに。
それがバレたのに。
なんでこんなに嬉しいんだろ…?