あれから幸いなことに

幹は同じ電車には乗ってこなかった。

でも、やっぱり怖かった。

いつか乗り合わせるんじゃないかとか、

今度こそ気付かれるんじゃないかとか。

結局また手首を傷つけるようになっていった。

相変わらず定規でだけど。

でも、この調子じゃ

いつかカッターを持ち出すんじゃないか、と

不安になる。

自分のことなのに、

自分じゃコントロールできないことも多いから。


そんな風に自分で精一杯で、

茉莉の様子がおかしいことに全く気付かなかった。