大晦日の昼下がり、私は仕事に忙殺されているお母さんの代わりに大掃除に没頭していた。安い・古い・暗いの、3拍子揃ったアパートの2DKだからさほど大がかりに掃除する事もなく、ましてや自室なんて勉強机と布団しかないから夕方になる前には終わりそうだ。ベランダの網戸を拭き終わり、雑巾と灰色のどろどろとした水が入ったバケツを手に部屋に戻る。頭の中では、何時にお祖母ちゃんのところへお節をもらいに行くかということと、まだ掃除していない部屋はないかということでいっぱいだった。

「あ……。うわっ!」

 雑巾を絞っていて、掃除していない部屋を思い出した。それが原因で手が滑り、絞り汁が服に飛び散った。さいあくだ。お気に入りのエプロンだったのに……。


さみしいのほし
Act.02 時の止まった部屋


 まだ掃除していない部屋、それはお母さんの部屋。

 3年前まではお父さんとお母さんの部屋だったけれど、今はお母さん専用の部屋になっている。お母さんの部屋になってからは、部屋の主が滅多にいないこともあって頻繁に入ることがなかった。いつぶりだろうか、部屋に入るのは。ドアノブを握ったままふと考えると、きっかり1年前、今のようにこうして大掃除をするために入って以来だと気づく。子どもの頃は、1人で寝るのが嫌で毎晩この部屋に忍び込んで、お父さんとお母さんの間に潜り込んでいたのに。