不満げに鼻を鳴らす、笹原を非難していた男女二人は、それ以上何も言わず集団に戻っていった。

所詮、優衣を妬むやつと優衣に彼氏が出来たことに焦ったやつの戯れ事だ。

「優衣ちゃん、ありがとう…!やっぱり優衣ちゃんは天使だ!」

「うん、笹原くんはちょっと黙ってようね」

笹原は笹原で、優衣に庇ってもらったことが何より嬉しいようだ。

まぁ、こうして周りから罵詈雑言を吐かれるのも日常茶飯事だから、慣れてしまっているのかもしれない。

元からそう気にしていないようだったし。

「あの、優衣ちゃん…。溝渕裕斗と付き合ってるって、本当?」

「うん、そうだよ」

チラチラと優衣の表情を伺いながら呟いた笹原の質問に、優衣は事もなげにそう答えた。

あまりにシンプルにあっさりと返され、笹原は虚をつかれたようにキュ、と口を結んだ。

「本気で、好きなの?」

「うん、好き」

「本当の本当に?」

「うん」

煩わしいくらいにしつこい笹原の問いにも、一つ一つ返す。

笹原の疑問も納得がいく。

優衣は、自分からは決して人を好きにならない。

惚れたら負けだと思ってる。