「付き合うぅぅ?」
「うん!告白したらオーケーされちゃった」
俯せに倒れる私の上で、淡いピンクに彩られた爪を口元に持っていき、嬉しそうに微笑んでいる。
溝渕先輩のことは、いくら恋愛に疎い私であっても知っている。
チャラチャラとした派手な外見に恐ろしく整った容姿。
泣かせた女は数知れず。
手当たり次第に食い物にしては、女を使い捨てのように扱う、だとか嘘か本当か分からない噂が蔓延っている。
それでもお近づきになりたい女が後を絶たないのは、ある意味才能だと思う。
私としては、大切な友達が傷つく様なんて見たくないから、本当は反対するべきなんだろうけど、恋の“こ”の字も知らない私が割り込んでいい問題でもない気がする。
それに、先輩が噂通りの人じゃないかなんて、それこそ話したことすらない私が知るよしもないのだし。
自分磨きに暇のない優衣にとっては、周囲からの嫉妬や羨望による嫌がらせなんて気にするタイプではないから、そこは別に心配していないけれど。
ぶりっ子と思われがちの優衣は、相手を蹴落とすよりも自分を磨き上げることに力を注ぐ、意外と努力家なのだ。


