「変な夢――」
 いつの間に眠っていたのだろう……神妃は体に馴染んだ布団にもぐり込んでいた。
 眠気を払うように、瞬きを繰り返し寝返りを打つ。
「おはよう、神妃」
「創星」
 顔を向けた先に、柔和に微笑む姉の顔。
 その顔を見て、神妃はほっと胸を撫でおろす。
――やっぱり夢だったんだ。
 安心すると、先ほどまで見ていた夢が可笑しくなり、神妃はくすりと笑う。
「神妃? どうしたの?」
 そんな妹の姿に創星は首を傾げ、神妃の前髪を梳いて額に触れた。
「創星、お誕生日会は?」
「神妃が倒れてそこでお開きだよ? 覚えてないの?」
 苦笑交じりに創星が問えば、神妃は申し訳なさそうに小さく頷く。
「ごめんね、創星楽しみにしてたのに、私どうして倒れたんだっけ?」
 記憶と夢の中の出来事が入りまじり、むしろ夢の中の出来事の方が印象強くて誕生会の記憶が殆ど飛んでいた。
 その神妃の様子をじっと見つめていた創星は、小さく息を吐き出した。
「創星?」
「神妃、自分が本当に倒れた理由覚えてないの? そう思いたいだけなんじゃないの?」
「何のこと?」
 ぎしり。
 神妃の横たわるベットに創星も乗り上げ二人分の重みにベットが軋む。
 枕を挟んで両手を付き覗き込んでくる創星の瞳は、ゆらりと茶色から藍色へと変化する。
「あ、うそ……」
 夢だと思っていた事が、現実のものとして神妃に降りかかる。
 見慣れた姉の容姿に、見慣れない藍色の瞳が不釣り合いで不気味さが際立っていた。
「酷いよ。傷つくな」
 逃げ場をふさがれた神妃は、夜の海の様な創星の瞳から目を逸らせなくなり、にっと半月を寝かせたような怪しい創星の笑みにぞくりと背筋に悪寒が走るのを感じた。
 自分へ恐怖にも似た感情を向け瞳を揺らす神妃へ、創星は表情を変えずゆっくりと神妃へと近づける。
「ね、どうしてそんな顔するの? オレが怖い?」
 創星のその問いに応えるように、神妃の喉がこくりと鳴った。
「何か言ってくれないかなぁ」
 指に神妃の髪を絡ませながら、するりと頬を撫でると絡め取ったその髪の毛に優しく口づける。
「あんた、なに?」
 やっとの思いで口に出せた言葉は、気絶する前にも聞いた事。その問いに、創星は前と同じく「創星だよ」と答えた。
「嘘だ! 創星は普通の女の子だもん。そんな風に――」
「姿が変わるはずないって? 言ったじゃん。姉の姿が嘘なんだって」
「じゃぁ、本当の創星はどこ!? 創星をどうしたのよ!!」
 恐怖に強張る体を必死に動かして、覆いかぶさる創星を押しのける。
 創星はすんなりとその力に従い、体を起こしで苦笑する。
「もう、そこから間違ってる」
「なにが」
「入れ替わる必要なんてない。双子の姉の創星という少女が虚像なんだから」