「前ってどこ」 「自分が今向いてる方向でいいんだよ。 もしくは、こっちが前だと自分が信じた方向」 「‥ん」 「そしたら、この風の音に記憶をさらっていかれるようなイメージね。 それができたら大丈夫」 そしたら全部、忘れてね。 振り向いたり、しないでよね。 伊久さんのことも、あたしのことも。 全部忘れていいからさ。 「じゃ、いくよ」