目眩をこらえて身を起こし、視界がはっきりとしていくのを待って、辺りを確認する。
そうしていくらもたたないうちに凛の背後から声が聞こえた。
反射的に身を強張らせ、声のした方へ顔を上げると、青年が驚いた様子で立ちすくんでいた。

「おい……」

青年は凛に駆け寄ると、腕を凛の身体の下に差し入れ、抱き起こした。

「…どうしたんだ?大丈夫か?」

「やめてください。さわらないで」

凛は咄嗟に身を引いた。

青年は手を引っ込め、凛をじっと見つめた。

「あんた珍しいけど綺麗な目だな。真っ黒だ」

凛は黙っていた。

素性がバレれば、今度こそ殺されてしまうかもしれない。

「どこか怪我はしていないのか?」

青年は筒を取り出して、凛に差し出した。

「毒なんか入ってない。水だよ。飲みな?楽になる」

青年から筒を受け取ると水を口に含む。
乾いて張りついた喉を滑り降りていく水が心地よかった。

「俺はナガトだ。ここの近くに住んでいる。あんたはどこから来た?旅の人なのか?」

SA