学校に着いて席に座った。
今日はたいした授業ないし、サボろうかな。
「飛鳥、うち授業出ない」
「えーなんでぇ」
飛鳥は真面目で授業をサボることなんてない。
私だって毎回毎回授業に出ないわけじゃないけど。
時々サボりたくなるし。
鞄を机に置いてケータイだけ持った。
「図書室にいるから飛鳥も来たかったら来てよ」
「行かないよー、早く戻ってきなよ?」
なんで真面目な飛鳥とチャラチャラした羽鳥が付き合ってるのかは知らない。
分かんない。
飛鳥はあんなヤツじゃない方がいいのに。
ガラッ――
「あ、桃ちゃん。ここおいでよ」
「南先輩…」
図書室には南先輩がいた。
先輩は手招きをして私を隣へと座らせる。
「桃ちゃん、サボりー?」
「はい。やる気でなくて」
「たまには息抜きも必要だよねー」
黒縁の眼鏡をかけた先輩からは女遊びが激しいなんて想像もつかない。
「何読んでるんですか?」
「難しい本」
先輩は笑って本を閉じた。
「何書いてあるか全然分かんないよねー」
立ち上がって本棚に戻す。
「でも分かんないことってもっと知りたくならない?」
「え…?」
先輩は怪しい笑みを浮かべた。
「俺、桃ちゃんのこともっと知りたい」