今から五年前。

21歳の夏を私は病院で過ごしていた。


『立川さ~ん。検査の時間ですよ。』
そう言って迎えに来たのは担当の看護婦の佐藤さん。

『自分は元気なのに…』
と病気を認めず、治療を拒む私に嫌な顔一つしないで接してくれる。
心の中では申し訳ないと思いながらも、素直じゃない私はいつも佐藤さんに辛くあたっていた。


『もう検査とか別にしなくていいし。私全然元気なんだから早く退院させてよ!こんなとこ居たくないし。』

『居たくないなら早く治さなきゃ!ねっ?』
まるで子供を諭す親の様な佐藤さんの態度に私は更にイライラしながらも、白く冷たい廊下を渋々歩き出した。




一週間前…
友達とクラブで遊んでいた時、急に息が苦しくなり倒れた。

そして病院で検査した結果、心臓の病気である可能性があると告げられた。

今まで普通に生活してきたのに、突然心臓の病気とか言われても意味分かんないし。むしろ『この病院ヤブ医者なんじゃん?』位に思っていた。


認めたくなかったんだ。
自分が病気とか…。


病院にいると、嫌でも自分は病人なんだって思い知らされて逃げたくなった。