「遅刻でーす」
そこにいたのは、新川月也。
男子の中で一番勉強ができない人。
ていうか、やらない人。
顔は整っている方だが、いつもやる気のない表情をしている。
笑うときは、男友達数人と楽しくしゃべっているときくらいかな。
遅刻やサボりが多いから、先生たちは、毎回呆れている。
「おい。なんで遅刻してきた?」
すかさず柊先生は、新川に訊く。
新川相手だと、少し顔が険しくなっている。
でも、そんな先生の表情に慣れているのか、新川は、平気な顔で答える。
「寝坊!」
友達と話しているみたいな大きな声だった。
てか、寝坊って……。
寝坊したなら、思いっきり休んじゃえばいいのに。
わたしはそうするけど、とひとりでうなづく。
新川の返事に、ため息をついた柊先生は、授業を続行した。
