神の森

 
 光祐は、神の森に一歩ずつ近付くに連れて、空気の重さを感じていた。


 歩みが重く、前方に壁が立ちはだかっているように感じられる。


(祐里、迎えにきたよ)


 光祐は、重い壁を押すように進みながら、祐里のことを想った。


「父上さま、大丈夫でございますか。

 とても苦しそうにございます」


 祐雫は、光祐の表情を見つめ、何も考えずに前に歩み出た。


 すると光祐が感じていた空気の重さはすぐに和らいだ。


「祐雫、わたしは神の森から拒絶されているようだ。

 祐雫が先に歩いておくれ」


 光祐は、大きく息を吸いこんだ。


 牛車の村人が川を渡らなかった訳が分かるような気がした。

 もうすでに神の森の領域に足を踏み入れているようだった。


 不思議なことに祐雫は、暑さも感じず、先ほどよりも元気が沸いてきた。

 この地の空気がどこか懐かしさを漂わせていた。

 まるで母の胎内にいた時のような気分に浸る。


 途端に遠くに見えていた神の森が瞬く間に目前へ迫ってきた。