「小夜さん、こんにちは。
坊ちゃまがどうしても祐里ちゃんのお誕生日をお祝いしたいと
おっしゃいましたので、一緒に参りました」
三歳を迎えたばかりの光祐は、初めて祐里に会いに来た。
「紫乃さん、こんにちは。
光祐坊ちゃま、いらっしゃいませ。大きくなられましたね」
「さよ、こんにちは。
ゆうりのたんじょうびのおもちです。
ゆうりとあそんでもいい」
光祐は、誕生祝いの紅白餅の箱を小夜に差し出した。
「光祐坊ちゃま、ありがとうございます。
どうぞ、祐里と遊んであげてください」
小夜は、紅白餅の箱を受け取って深々と頭を下げた。
光祐は、靴を脱いで祐里の側に駆け寄った。
「ゆうり、ぼくは、さくらかわこうすけ。いっしょにあそぼうね」
光祐は、祐里の右手を取って笑顔を向ける。
光祐から手を取られた祐里は、固く握っていた右手をゆっくりと開いて、
その掌(てのひら)から咲き出た桜の花を光祐に差し出す。
それを側でみていた小夜と紫乃は、驚きで言葉が出なかった。

