「祐里。大層可愛らしい名前です。 お名前をいただいた光祐坊ちゃまにも可愛がっていただけると 嬉しいですね」 小夜は、祐里が生まれるまで手伝いにあがっていたお屋敷の 二歳になる光祐さまの乳飲み児だった頃を思い出していた。 奥さまは、産後の肥立ちが悪く床に伏していて、婆やの紫乃と交代で 光祐さまの世話をした。 光祐さまは、利発でお屋敷の後継ぎに相応しい気品を持ち合わせていた。 「祐里は、しあわせになる子だよ」 春樹は、こころからそう思えた。 小夜は、にっこり笑って頷いた。