「小夜、見てごらん。お腹がいっぱいになったのだね。
しあわせそうな顔をして眠っているよ」
春樹は、目を細めて祐里を見つめた。
「春樹さま、名前を考えられましたか」
「名前は、お世話になっているお屋敷の光祐坊ちゃんの「祐」の字を
いただいて、祐里に決めたよ。
お屋敷の長子は「祐」の字を名前に使われるらしい。
旦那さまも啓祐さまだし、その由緒ある「祐」と里を出てきた私たちが
この桜川で恙無く暮らしていける願いも込めて、祐里と名付けることに
したよ」
春樹は、祐里が女子であったことに内心ほっとしていた。
神の守の血筋を引く祐里は、生まれながらにして力を秘めていた。
もし男子であれば、必ず神の森が草の根を分けても迎えに来ると
確信できた。
この桜川に来て以来、春樹は、自分の気配を消していた。
不思議と他の力が加わって結界の力を強めて守ってくれていた。

