光祐が食堂に入ると、美和子が席に着いたところだった。


 祐雫も勉強を終えて、光祐の車の音を聞きつけて食堂に顔を出していた。


「父上さま、お帰りなさいませ。お疲れさまでございます」

 桜色の浴衣を着た祐雫は、祐里の面影を見せていた。


 光祐は、祐雫の笑顔に寛いだものを感じた。

「ただいま、祐雫。秘書をしてくれている桑津美和子くんだよ」


 美和子は、理知的な光祐の表情が、柔和で家庭的な表情に

変化しているのに気付いた。


「こんばんは。祐雫でございます。

 父上さまがお世話をおかけしてございます」

 祐雫は、祐里のワンピースを着ている美和子に

懐かしい想いを抱きながら丁寧にお辞儀する。 


「こんばんは。祐雫さん。とても浴衣がお似合いですね」


「ありがとうございます。

 今夜は、お泊まりになられるのでございましょう。

 祐雫のお部屋でご一緒いたしましょう」

 美和子は、お屋敷の優しい雰囲気に包まれて、

不思議な気分を味わっていた。


 入社して以来、光祐に憧れて恋い焦がれていた自分の熱い想いが

穏やかなものに変わっていった。