「軽い記憶障害ですね。」





次の日、医者が言った。

…記憶障害…。





「ほとんどのことを覚えているので、生活に支障はないでしょう。忘れていることを話してあげてください。少しずつ、思い出せるはずです。」

「…はい。わかりました…。」





淡々と話す医者に、母さんは答えた。

僕は、黙ったままだった…。





病室に戻ると、藍と…昨日の女の子がいた。





「…軽い、記憶障害…ですって。」

「そうなんですか…。思い出しますよね??春風のこと…。」

「えぇ…。」





女の子は、何も言わずにただ…僕を見ていた。

目が合うと、また…あの気持ちが、懐かしいようなよくわからない気持ちが溢れてきた。





「……とりあえず、周に話しましょうか。」





母さんが藍達に呼びかけた。





…僕が、忘れていること。

きっと、大切なこと…。





「えっと、じゃあ…まずは、春風のことだよね??」

「春風チャン、説明してあげて…??」

「…はい…。」